左利き遺伝子が発見される?
最新の研究によると、英オックスフォード大学の研究チームが、人の左右を決定する遺伝子を発見したそうです。この遺伝子が人の左利き・右利きになることも影響していると考えられるといわれています。
オックスフォード大のウィリアム・ブランドラー氏率いる研究チームが、3300人の被験者に利き手を決める作業をしてもらい、そのゲノムのうち10万個以上の共通の変異を調べたそうです。その結果、「PCSK6」という遺伝子が利き手の決定に強く関係していることを特定しました。
この遺伝子は、体が発達する過程で、心臓は左とか、肝臓は右といった左右の違いを決めるのに重要な役割を果たしているそうで、例えばマウスのこの遺伝子を壊すと、体の間違った場所に臓器ができてしまうということがわかりました。
ただ、人間以外の動物では、右利き・左利きに分かれる確率はほぼ同数だったのに対し、人間はなぜ10%の確率で左利きになるのか、そこには他の要因があるのではと考えられます。
人間の言語機能が左利きに関係している?
ほとんどの人間は脳の左半分に言語機能が集中しています。よく知られたことですが体の右側の運動や反射などをつかさどっている脳の左半球ですが、脳の左半球に言語機能が集中するようになったため体の動きを右側がリードする役目を担うようになったのではと考えられています。
そして人間は道具を使ったり物を握ったりといった動作を、右手を優先的に使うようになったため、基本的な動作は右利きとなる遺伝子へと進化していったと考えられます。本来50:50で生まれる右利きと左利きの割合が、こうした言語能力によって右利きの割合が増え、左利きの割合が減っていったものと考えられます。
ニュージーランドはオークランド大学のマイケル・コーバリス氏は、言語能力と利き手の因果関係はもっと深く結びついているのかもしれないと主張しております。
チンパンジーやボノボなど類人猿の一部でも一連の手の動きで仲間とコミュニケーションをとることがあり、チンパンジーも人間と同じように右利きが多いのではないかという説です。しかし、専門家の間でその意見は分かれており一概には言えない状況です。
左利きに関係する遺伝子を発見したオックスフォード大のウィリアム・ブランドラー氏は、「胚の発達段階で左右を決定する遺伝子は特定されたが、それだけが原因とは言い切れないだろう。」と語っており、「利き手が左右どちらになるかは、環境や文化的背景によっても決定される。左利きは強制的に右利きに修正される風潮もある。その為、利き手を決定付ける要因は複雑で、まだ多くの謎が残されている。」とのことです。
昭和の日本でも左利きは悪いものとされ、右利きに矯正される風潮がありましたが諸外国でも同様の風潮があったことがわかります。
訓練によって後天的な左利き・右利きになることが可能なことは証明されていますので、「遺伝」と言う部分にフォーカスした場合は後天的な左利き・右利きは除外して考察したいところですが、後天的な利き手がが遺伝子になんらかの影響を及ぼすことはあるのでしょうか。そこも興味深いところです。