「利き手は人間だけのものだー!」というわけではなく、他の動物にも利き手が存在するのでは?と言う研究が各国いろんな研究者によって研究されています。
ニホンザルの利き手
ニホンザルの利き手研究は、京都大学霊長類研究所で行われており、宮崎県幸島のニホンザルにピーナッツを投げ入れて餌付けしどちらの手を使ってピーナッツをとるかというリーチングを観察した結果によりますと、
左利き:41%
右利き:20%
両利き:37%
という数値になったとのこと。これだけを見ると「ニホンザルは左利きか?」とも見えなくもない。イギリスでも、種類は違いますがサルの利き手を、京大と同様に餌付けと言う手法で実験しました。幸島のサルは野生の自然状態での観察、イギリスでは研究室のケージに入った状態という環境の差はありますが、2:1の割合で左利きが多いという結果が報告されています。
しかし、これらの実験結果には否定的な意見も多く、餌を取るときの状況や環境、体勢など複数の要因があってどちらかの手を使っている可能性が高いのでは?という説が支持されているようです。
現在のところ、ニホンザルには利き手というのは無いと考えられていますが、京大霊長類研究所でニホンザルの母子での興味深い実験もあります。
「緊急時に母ザルが子ザルを抱きかかえて逃げるときはどちらの手を使うか」というもので、人間も、ころんだ時に地面につく手や、飛んでくる火の粉を振り払ったりと、危機回避のときはとっさに利き手が出るということから、ニホンザルもそういう状況で利き手が現れるのでは?という研究です。
結果、母ザルが子ザルを抱きかかえるのは圧倒的に左手を使う場合が多く見られました。これは緊急時の判断が右脳優位であり右脳と繋がる左手を使って危機回避行動に出るのではという考えもありますが、広い意味で「利き手」と考えると、左手を使って行動してるので「母ザルは左利き」といってもいいかも?
とはいっても、実験対象としては母ザルに限った話なのでその他のメスザルやオスに関してはまだまだ謎が多く残ります。
チンパンジー・ゴリラ・オランウータンには利き手がある
知能の高い類人猿ではどうでしょうか。
チンパンジーでの利き手の研究では、「紐を引っ張って物をとる」など4種類の片手動作を30頭のチンパンジーで実験観察した結果、25頭のチンパンジーが80%の確率でどちらかの手を一貫して使う=利き手の存在するという見解が示されてます。
実験結果では、左利きのチンパンジーが14頭、右利きが11頭となりましたが、誤差の範囲でだいたい50:50に近い数字比率ではないかと考えられています。
つまり、人間のように左右どちらかの利き手が多数を占めるというわけではないため、遺伝子的な関係についてはなんともいえないようです。
野生のチンパンジーを観察した研究結果も存在し、野生のチンパンジーが椰子の実を割るという動作をするとき、石を使って割る=道具を使うときには、個体によってどちらの手を使うかが100%決まっているという結果が見られました。これは「チンパンジーには利き手が存在する」ということを支持する結果になります。おもしろいですね。
チンパンジーの実験から、類人猿にはどうやら利き手がありそうという見解ですが、チンパンジー・ゴリラ・オランウータンの3種の類人猿で、同じ方法で利き手に関する実験をした結果、
チンパンジーとゴリラは右利き優位
オランウータンは左利き優位
という結果になりました。「なんでオランウータンだけ左利きなの?」という感じですが、一説によると、樹上生活という環境下にあるオランウータンはニホンザル同様右脳と繋がる左手を優位に使用するのではという考え、地上に降りて2足歩行やそれに近い姿勢での生活や集団でのコミュニケーションなどで左脳も優位的に使うようになり人間同様の右利き優位になるのでは?とも考えられているようですが、先のチンパンジーの実験では右利き:左利きはおよそ50:50という考えもあることから、一概には言えないような気はします。
イヌ・ネコは利き手(利き前足?)はある?
人間と一番親しく近い存在のイヌやネコにも利き手はあるのでしょうか。
というか利き前足というべきかもしれませんけど、面倒なのでここでは利き手ということにしといてください(笑)。
まず、ネコに関する利き手の研究によりますと、結論から言うと「利き手はある」という実験結果があるもののそれを否定する意見もあります。
実験では、細いガラスチューブの先にうさぎの肉を入れ、それをどちらの手で取り出そうとするかという課題で行われました。
結果、58%のネコに、どちらか手を使用するという偏った行動=利き手が存在するという見解を示しました。さらに利き手でいうと右:左=およそ1:2の割合で左利きのネコが多いという見解でもありました。
しかし、これは実験課題を繰り返すうちに試行回数を経てそのネコがどちらの手を使うかの癖がついてしまったのではないかという見解もあります。取ろうとしてもとれないお肉ですからイライラして躍起になって夢中になって片方の手で何回もやっちゃうってのは人間でも考えられますよね。疲れたら反対の手を使うとか。
なので、ネコの利き手については「あるともないともいえない」という感じです。
(ただ、個人的には猫好きなので「実験でネコは左利き傾向が強いよ」って自慢したいです♡)
イヌの場合は、意外なことにイヌの利き手の研究があまり報告されていないとのこと。
それでもネコと同様に実験が行われたそうですが、結果としてはネコと同様で、実験課題を繰り返すうちにどちらかの手に偏るのでは?という傾向が見られたのでなんとも言えない。そこで、「餌を取る」という課題以外に「お手」や「目隠しを取る」という動作での実験をした結果、左右どちらかに偏ると言う傾向が見られました。「利き手がある」とまでは断言できないですが、動作を繰り返し学習するうちにどちらかの手を多く使用するようになるということはあるようです。
また、イヌの実験で興味深いのはオスとメスに差が現れたことです。
オスイヌは右利きが多くメスイヌには左利きが多いという統計結果となったそうです。
先に述べたように「利き手」とまでは言えないですが、広い意味で言えば「メスのイヌは左利きが多いらしいよ」くらいには言っちゃってもいいのかも?
他の動物でも利き手の研究は行われている
サル犬猫などいがいにも、世界中でいろんな利き手の研究が行われており、カエルや魚やヘビまで利き手の研究がなされているそうです。
それぞれあまりはっきり断言できるような研究結果は得られていないようですが、ひょっとしたら遺伝子操作したりして左足だけで大ジャンプするカエルや左ヒレだけ大きい魚なんかがうまれるのでしょうか?
そういえば片手だけハサミが大きいカニ「シオマネキ」とかも、利き手ってあるんでしょうか?きになるところです。なんか情報あったら教えてください!